すると、さっと狼が動き出した。


少し歩き出すと止まって、こっちを見つめている。


その間にも雨は強くなり、狼はすぐにずぶ濡れになってしまった。


狼のいるほうをよくみると、どうやら私がここに来た時の方向だった。


どうしようか迷っていると、狼が近づいてきてそっと私の袖口を噛み引っ張っていく。


「えっ?ちょっとまって!」


幸いスピードは早くなかったので転ばずにすんだが、足元が悪く視界も悪いため、心愛は泣きそうになりながら、今唯一頼れる狼について行くしかなかった。