「ここは、とても狭い。

 外の世界は、もっと広いでしょう?

 それに、ここにいるより、ずっとずっと自由だ」




すると、逢坂くんはやっと顔を上げた。




目と目が、重なり合う。




その瞳に、胸がキュッと締め付けられた様だった。




「僕は、ここから出られたら、やりたい事が沢山あるんだ。

 だけど……僕には、それが出来ない」




「出来ないって……なんで?」




「あ、いや……なんでもない。

 それより、里沙ちゃんは?

 他にやりたい事、ある?」




「そうだなあ……」




目線を手元に戻して、私は鉛筆を置いた。




そして、今描き上げたばかりの絵を、優しく指でなぞった。




「もっと沢山の絵が描きたい。

 色んな場所へ行って、景色を見て、人を見てみたい。

 そして……それを、描いてみたいんだ」




いつか、何枚ものキャンパスを、自分の絵でいっぱいにしてみたい。