春。

それは出会いの季節、別れの季節と色々な言われ方をされている。

だが、出会いが春だけとは限らないと考えている笹岡 沙紀(ささおか さき)は少々冷めていた。

「あーあ。
出会いとかどうでもいいからさ……


この霊の数、なんとかしてくんねぇかな、マジで」

幼い頃に死にかけた事があって以来、霊と会話するレベルにまで達してしまった。

笹岡的には本当にどうにかして欲しい。

春は霊と言うイメージは薄いが、それはあくまで一般人の認識だ。

そもそも霊は一年中あらゆるところに存在してるし、朝も夜も関係ない。

霊は基本どこにだっている。

探せばだが。

初の高校生活が1ヶ月過ぎた辺りだった。

夜、一人で下校する笹岡。

なにか異常な気配に気が付いた。

「………なに、あの影。」

暗くてよくわからないが黒い影がユラユラとこちらへ向かってくる。

この嫌な感じだけでわかる。

あの影、生き物ではない。

______逃げろ。

そう脳が判断した瞬間

黒くて冷たいモノが視界をふさいだ。

体が凍りつきそうな感覚になる。

この世のモノじゃないなにかの冷たい息がかかる。

「あ、ああぁああ……」

「……っ」

笹岡の視界に写ったモノは殺気に満ちた赤い目、恐ろしい口。

化け物と化した霊だった。