不思議の国の物語。

「キャハハ。」
麻折が笑っている。
人を殺したのにも関わらず。 無垢な笑顔で笑っている。 
「アハハハハ,アハハハハ。 お兄ちゃん…。 これでよかったんだよね? ねぇ? お兄ちゃん」
麻折は…兄が大好きだった。 歪んだ愛情でもよかったんだ。 本当に。
「お兄ちゃん,お兄ちゃん。 本当にこれでよかったんだよね。」
麻折は,兄のことを思い,近くの所で自分が殺した奴を見る。
「ごめんね。 でも,あたしを助けちゃったからダメだったんだよ。 こんなあたしなんかを助けなければ貴方は死ななかったのにね…?」
そういって麻折は…謝り続けた。 そして,少し時間がたった。
「じゃああたしは行くねっ♪ ありがとう,黒戈」
そういって終わるはずだった。 けど…。
あいつが来てしまった。
「あれ? 桜花終わったの? 黒戈の始末」
「う…うん。 お兄ちゃん」
兄が,来てしまった。
「そうか。 やっぱり麻折は嘘が下手だなぁ。」
「え…??」
 自分は嘘を付いていない。 だって,この血が証明してるもの。
「最後までやっていない。 砂になるまでやらないと…ね?」
 兄は笑顔で言ってくる…。 逆に兄がとても──恐ろしく思った。
「う,うん。 分かったよ。 Jお兄ちゃん」
「Jじゃねぇ!! 俺は切裂 時艱(じかん)だ! よく憶えておけ。 妹だからって容赦しねぇからなぁ。 わかってるよな? 桜花」
 とっても,とっても,恐ろしかった。
こんなのが自分の兄だったのはとても残念だった。
「う,うん。 分かったよ。 時艱お兄ちゃん」
「お兄ちゃんじゃなくてお兄様と…よ,べ…」
そういって切裂 時艱の意識は途絶えた。