キィイ。
扉の軋む音がした。
でも、その少女は気づかなかった。
チラリ。 と見ても気づかない。
あたしは肩を叩き気づかせることにした。
トントン。
「こんにちは。」
「ん、あなたはだぁれ?」
会話がかみ食わない。 いや、言葉のキャッチボールが出来ていない。
「あたしはチョコだよ。」
「もう一回、ゆっくり言って。」
あたしは頷きゆっくり言った。
「あぁ、チョコちゃんね。 ごめんね。 耳が生まれつき聞こえないの。」
そう一気に言った。そしてあたしは分かった。何故言葉のキャッチボールが出来なかったのかを。
「そうなの。」
ゆっくり、ゆっくり言う。
「でも、ね。  目は少し見えるから。 字を書いてくれる?」
「う、うん。」
あたしは地面に字を書く。 木の棒があったから木の棒で。
「あなたの名前は何?」
「あたしの名前? えーっと…燐火(りんか)だよ。」
「可愛い名前だね。」
「あ、ありがとう//」
字と言葉の会話。 あたしは肝心のことを聞いていなかった。