「いや俺は…」


アレルギーなんで、と言おうとした唇を、彼女が唇で塞ぐ。
頬に手を当てて。


あっとなる。
会場がざわついた。


「茉莉子(マリコ)様、茉莉子お嬢様!!」


公衆の面前で何てことを!!と、お付きらしい女性が飛んでくる。


「……っ!!」


「…アレルギーは??」


目を見開いたまま固まった。
けれど蕁麻疹は出ていない壬言さん。
どういうことか。


ぎゅうっと胸が締め付けられた。


「……なんか、免疫出来たんですか??」


真言さんが。
が、お付きの女性が、


「申し訳ございません!!あの…」


と、服の上からだというのに、触れた途端、蕁麻疹が顔中に広がった。本当のアレルギー症状が出たのだ。
これはどういうことか。


ふらつき、後ろのテーブルに手をついた。


私は何だかすごくショックを受けていた。
美人にキスされたのに、平気なんだ。私だけ出なかった訳じゃなかったんだ、と。


そしてその背後から、女性のウエイターがツカツカと近付いてきた。
ふと見ると、手に何かを持っている。