「と、仰いますと」


真言さんが静かに問いかける。


「……結婚式をするという話になっているはずなんです。ボスと彼女が」


「ほう」


一応は初耳のふりをして話を聞く。


守秘義務がある以上、知ってますとは言わない。


「彼が一方的に持ちかけて進めている話で。入籍しかしてなくて別姓で仕事してるから、左樋とのことも知らなくて」


意外だ。


すごく華やかな、豪華な式を熱望するイメージしかなかったけれど。


一生に一度、お姫様になれる日だ。


いや、彼女の場合は、日常がお姫様か。


「それすらも詐欺らしくて。私の学生時代の友達にまで手を出してるとかないとか、噂で聞いて」