隣の市に、港はあった。
それくらいの距離なら、仕事終わりにでも行って帰ってこられそうだ。


もちろん松嶋くんにも応援を頼んだ。


そして。
当然と言うべきか、神前家にもクルーザーはあった。しかも同じ船舶港だ。


わざわざ持ち歩かなくてもいいように、近くのヘアサロンの店舗に鍵も保管していた。
以前変身させられた白いお城だ。


経営者として、顔を出す傍らに利用できる。


急いで港に向かうと、LEDの外灯に照らされた船が数隻停まっていた。


「やっぱスゴいわ、神前財閥」


ヒュウと口笛を鳴らす沙紀。
やっぱりただただ圧倒される私。


「急いで」


促されるままに、クルーザーに乗り込む。


「久し振りです、腕が鳴りますね」


妙に嬉しそうだ。


「遅なった!!すまん!!」


松嶋くんがバッグを持って走ってきた。機材やら必要最低限の荷物が入っているようだ。


「もう一人の相棒には陸で待機してもらう。行くで!!」