「し、仕事仲間だよ、ただの」


言ってから、胸がチクリとした壬言。
本当のことを言いたい。
けれど目の前に、かつて恋い焦がれた女性が、もしかしたら手の届くところにいる。


出来ることなら、この場で抱き締めたい。好きだったと伝えたい。喉元まで出そうで出ない。


何十回と、飲み込んだほどの想いを、必死で抑えた。
抑える必要があるのかどうかもわからなくなるほど。


今はフリーなんだ。彼女は。


けれど。傷つけたくない女性がいる。真来を傷つけたくはない。
真言に取られたくもない。


「患者さん、助けてくれたんですって??ありがとう」


「いや、俺は」


手を握られ、反らそうとしても目を見つめられる。


「………っ!!」


「なに??」


「……う、いや、あの」


普段、無愛想で誰にも心を開かない壬言が、誰も見たことがないほど、動揺する。


ゴクリと唾を飲み込む。


「本当は、好きだったわ。ずっと」


「えっ…」


ふっと近付いて、少し背伸びする。
唇が、触れた。