「美味しい!!誰に教えてもらったの!?これ!!料理教室になんて行ってないはずでしょ!?」


一口食べて、沙紀が感動する。


「いや、えっと」


あの状況をどう説明するべきか。双子のお兄さんに教えてもらったなんて言えないし。


そもそもなんで一緒に住んでたかなんて、私にもわからない。


「味付けも絶妙だし、第一こんな少ない調味料で、よくこんなの作れたね!?」


一人暮らしは女性の方が調味料は少ないものだ。『さしすせそ』の酢と味噌はあまり見ないし聞かない。


あってもマヨネーズかケチャップ辺りだろう。


働く女性とはそんなものだ。
仕事に一杯一杯で、いかに効率よくこなすか、売り上げを伸ばすか、スキルを認められるか。


自分が食べるものなんて二の次。腹に入ればよし、お腹を壊さなければよし、となる。


だからいざとなると困るのだけれど。


「し、知り合いと、常連さんに、ね」


「ふーん??まあいいわ。じゃあ私にも教えてよ。宿代代わりに」


「い、いいよ。わかる範囲でよければ」


「やった!!これで彼に美味しいもの作ってあげられる!!」


そうか。
そういう幸せもあるんだな。


なんかいろいろ覚えることに必死で気付かなかったけど、それを私に教えようとしてくれたのかな、真言さんは。