「別れた!?」


驚く沙紀に、こくりと頷く。


「……お店も、クビになっちゃった」


付き合って半年、そろそろ結婚も視野に入れて、通い同棲していた合間に、連絡して外で待ち合わせた。


今日は残業もなく、定時上がりらしい。


「……お願いがあるんだけど」


沙紀の職場の近くのカフェで。


肩まであるダークブラウンの髪をシュシュで後ろに束ね、薄いベージュの七分丈のカジュアルスーツを身に纏っている。


オフィスビルの一角、ブランドショップも建ち並ぶ。


レディース、フォーマルスーツの専門店で社員として働いている沙紀は、時期主任候補らしい。


一応私も昔の通勤着で小奇麗にはしているけれど、所詮バイトの立場だし、無職になってしまった身では、ショルダーバッグひとつで小さくなる。


なんか場違いだ。
スーツ姿のビジネスマンやら、キャリアウーマンがごろごろいる。


「…お金以外なら、協力できるかな」


「お金なんて、とんでもない」


お金を借りるつもりは元よりない。


金銭の貸し借りだけは、例え親子でも軽々しく口にするなと、社会に出る前に両親から言われていた。