あの時は、昴と彼女とのキスシーンを目撃して、悲しくて悲しくて、よく覚えていない。


(こんなにキレイだったんだな……)


私は立ち止まり、ボーッと、ただただその星を見ていた。



「夏夜さんっ!」


急に名前を呼ばれて、私を含め、その場にいた全員が声のした方に振り向く。

そこには、膝に手を置いて、息を切らしている佑くんの姿。

どうやらこの寒空の中、コートも着ないで私を追い掛けて来てくれたみたいだ。

汗が流れ落ち、それを手で拭う。

私なんかの為に、そんなに必死になるなんて……。


……そんな価値、私にはないのに。



『ありがとう』



私は、私にしか聞こえない小さな声で呟き、大きく息を吸って、呼吸を整えた。

(ハナちゃんさん、ごめんなさい。約束、破っちゃうね……)


心の中でハナちゃんさんに謝り、冷えた目を佑くんに向ける。


「佑くん」

「……はい」

「別れよっか」