「凍ったペットボトルでも買おうか」
「え?」
「俺はそうでもないけど、紬、結構泣いてたし。お姉さんとか親御さんに心配されるんじゃない?」
「あー……うん、否定はできないかも。というか、心配されるだろうなあ」
連絡も遅かった上に明らかに泣いた顔だと。心配される要素しか見当たらないのは気のせいではない。
素直に駅前のコンビニに寄って、二人して凍ったお茶のペットボトルを購入する。ホームに上がると椅子に座り、電車待ちをしながら二人で目を冷やすことにした。
見えなくても会話はできる。コンビニに寄ってから離れていた手は、また繋がれていた。
「わたるー?」
「ん、なぁにー?」
「……んー、やっぱりいいや」
「ふはっ、何だよ」
だって、毎週会いたいなんて、言えない。
考えてみれば、前回は────晶子と清吾のときは、清吾が学徒動員で訓練に駆り出されるまで、ほぼ一緒に過ごしてきた。晶子と清吾は幼馴染。そのおかげか、最初から憶えていたのは清吾だったが、晶子もそこまで遅くならないうちに全て思い出していた。
だからこそ、会えなくなってからが辛かった。その前、文と聡太郎のときは、お見合いの話が出てから初めて顔を合わせたから、一緒にいるのが当たり前でなかったはずなのに。
考えてみれば、今回が一番遅いのかもしれない。私と渉が出会うのが。今までは遅くとも十五になる年までには出逢っていて、……その分、別れも早かったのだけれど。
私も渉も、今年で十七。二年がどう作用してくるのか、かみさまの考えはわからないけれど、もしかしたら、と期待をしてしまうのはいけないことだろうか。
「つーむーぎー?」
約束したでしょう、と言いたげな声。きゅ、と渉の手に力が込められる。
渉もだよ、と言いかけて、直接的な約束はしていないことに気づいた。
交わした約束は、一緒にいる、ということと、記憶に関しては焦らない、ということだけ。私から渉への約束に我慢しないで言葉にする、というものは含まれているけれど、渉はそれを否定した。
渉、卑怯だよ。
心の中でだけそう詰って、言葉にするかどうかを悩む。駅構内にアナウンスが入って、そろそろ電車が来ることを知らせる。
渉の、彼の悩みに私が気付いていることに、彼は果たして気付いているのだろうか。気付いていて、それでも言っていいと言ってくれているのか、それとも気付いていないのか。
どちらにしても、彼にとって酷な約束であることを、私は生憎知ってしまっている。


