あしたのうた



恐らくシフトが終われば戻ってきそうな部員がいるのを頭の中でリストアップし、それまでならと受付席に座る。文化祭で発行する部誌と、絵担当の部員たちが書いたラミネートカード、そしてお茶とジュースを売ってはいるが、軽く見たところ売れ行きはよろしくないらしい。


元々そこまで多い数は仕入れていないが、それでも売り捌かないといけないだろう。疾風、とまだ黒板前に座ったままだった疾風を呼ぶと、分かった風の疾風が財布を出しながら受付に近づいてきた。


「何が余ってんの?」

「部誌とラミカは置いておくとして、お茶とオレンジジュース。どれにする?」

「置いておくつってちゃっかり数に入れてんじゃねーか。オレンジジュース二本貰う」

「残念」


クーラーボックスから取り出したペットボトルのオレンジジュースの水滴をタオルで拭い、代金と引き換えに渡す。今月金欠だからな、といった疾風に毎月でしょうと返して、ひらひらと手を振った。


「はいじゃあね疾風」

「せめて部室じゃなくて教室にいろよ、渉」

「善処はするよ」

「その答えはしねえやつだな」


しっかたねえなあ、と笑いつつしかし絶対にこうしろ、とは言ってこない辺りがお節介なのだろう。


教室を出て行った疾風を見送って、持っていた文庫本を開こうとすると机に影ができた。顔を上げると、紬。どうしたの、と首を傾げると、何か売ってるの、と逆に聞き返される。


「一応、部誌とラミカと飲み物。聞いてたならわかってると思うけど、お茶とオレンジジュースだよ。飲み物、買う?」


そういえばこの暑い中、飲み物を手にした姿を見ていない。


クーラーボックスを開けてお茶を取り出し、先程と同じように周りをタオルで拭う。はい、と紬に差し出したそれを戸惑いつつ彼女が受け取って、財布を出そうとするのを押し留めた。


「それ、貰っといて。正直どこから出たお金かってのはどうだっていいんだ。とりあえず物がなくなれば。俺からだとでも思っといて」

「でも」

「じゃあ、部誌買ってくれると嬉しいかな。俺出してないけど。嗚呼、ちなみに今回の表紙はさっきまでいた部長だよ」

「それは正直言われても困るけど……じゃあ一冊ください」

「はい、ありがとう」


二百円ね、と代金を受け取って二冊組の部誌を渡す。一冊は絵、一冊は小説。俺は出していないが意外と厚さのある小説は、外部投稿も承っているからだと思う。


そもそも和歌を載せたところで大したページ数稼ぎにもならないのだが。それもあるからこそ俺は結構自由にしてもらえている。好きな人が集まっているので、強制しなくても作品自体は集まるわけだし。