そうそう、ときんぴらごぼうを口に運びながら頷く。ここのきんぴらごぼうは私の大好物だ。肉類もあるものの、やはり魚料理を食べる機会が少ないのと、和食な感じなので魚が食べたくなるおかげで、ここで選ぶのは大抵魚料理になる。
ちらり、と向かいのお盆を見ると、ご飯とお味噌汁の他に、私と同じきんぴらごぼう、それから豆腐サラダと鯖の味噌煮。プラス一品で杏仁豆腐が載せられている。私も今度来た時杏仁豆腐でも食べよう。
鯖の味噌煮はとろとろとした味噌だれと、アクセントに入っている生姜の千切りが丁度いい味を出している。私が今日選んだ鯖の塩焼きは焼き立てでまだほんのり温かく、満遍なく塩が効いていてどこを食べても美味しい。小鉢のおかずも安心する味で、お母さんとはまた別のお袋の味、という感じがする。
ご飯も小、中、大の三種類から選べて、汁物は味噌汁と豚汁の二種類。麺類はうどんとそば、温かいのと冷たいのが両方揃っている。今日の私はご飯は小、渉は見たところ中のようだ。
季節によっておかずもまた違っており、それがまたいいところだと思う。今はどの季節でも色々な野菜が食べられるようにはなったけれど、やはり季節の野菜が一番美味しいと思うから。
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでした。……ごめん渉、ちょっと休憩しない?」
「うん。俺、お茶もらって来る」
「お願いします」
渉を送り出して、背凭れに背中を預け、上を向く。そっと閉じた瞼の上に持って来ておいた氷をタオル越しに乗せた。
気持ちいい、と感じるのはまだ瞼が熱を孕んでいるからだろうか。丁度いい具合にお腹も膨れて、また眠くなってしまう。だが流石に寝るわけにはいかないので、必死で眠気と戦いながら渉の帰りを待った。すぐに戻って来たのだけれど。
「……紬、眠いの?」
「……正直なところ」
「ん、お茶。あったかいやつだけど、冷たい水でも持って来る?」
「や、大丈夫。だから、話しよう」
ふふ、と笑い声が聞こえる。四人がけの席で対面していたのが、隣に座る気配。少しだけ氷を持ち上げて薄目で見ると、やっぱり隣に移動していた渉の手をそっと握った。
「今日は甘えたさんだね、紬」
「甘えどきかなあと思って」
「いつ甘えてくれてもいいのに」
「うーん……私には無理そうだよ、渉さん」
わざとさん付けで呼べば、そうですか紬さん、と彼も乗ってくる。ふふ、と二人して笑うと、渉にそっと頭を撫でられた。それを甘受して、綻ぶ口元は隠さない。
腫れは恐らく完全には引かないだろう。帰ったらまた冷やさないと、とは思うがお姉ちゃんにバレるのが面倒だった。家にいないならまだしも、今日はずっといる。しかも部屋ではなく姉はリビングで勉強する癖があるので、帰ったら鉢合わせる確率は九割を超える。
と。ある種、家でしか会わないと油断していたのだ。
「あれ、紬? ……と誰!?」


