その真意は、
「……んん、……つ、むぎ?」
────その真意は、うたの中の君は、紛れもなく彼を指す。
「おはよう、渉」
ふるふると震えた渉の睫毛が、そっと持ち上がる。まだ完全に覚醒はしていない様子の渉に私は笑うと、対面して言うのはこの時代では初めての言葉を口にした。
ぱちぱちと瞬きを何度かした渉が、私を眩しそうに見つめる。事態を理解したらしい彼はふわりと笑うと、おはよう、と優しく囁いた。
んー、と唸りながら渉に抱き締められる私はされるがまま、そのふわふわとした髪の毛にそっと指を通す。こうして触れ合うのは初めてかもしれない、と思いながら、くしゃりとその頭を撫でると同じように私の頭も渉に撫でられた。
「……髪、ぐしゃぐしゃになっちゃう」
「大丈夫、紬、ストレートだから」
「……そうだけど」
ふふ、と漏れた笑い声が肩にかかる。そう言われたら何も言い返せない、と諦めて、渉の匂いを胸いっぱいに吸い込む。お互い何も言わない時間が続いて、もぞりと渉が動いたことで私も行動を始めた。
「今何時?」
「……あー、十二時過ぎ。お昼過ぎたね、結構寝てたみたい」
「まず何時から寝落ちたのか分からない……」
「確かに俺も知らない」
それって結構寝た、とは言えないのではないだろうか。
疑問を持つが、そこを考えても仕方がない。渉の腕の中からするりと抜け出すと、立ち上がって伸びをする。同じように伸びをする渉のそれが終わるのを待つと、私は少し迷ってから手を差し出した。
「お昼、行かない?」
「そうだね、行こっか」
躊躇いもなく差し出された手をとって、渉が斜面を登っていく。慣れてきた斜面を渉の後ろについて登ると、私の顔を見つめた渉が微妙な顔をした。
「? どうしたの?」
「……目、やっぱり腫れちゃったね」
嗚呼、と頷く。タオルはなんの気も無しに返していたが、正直なところ忘れていた。しかしお腹が減っているのは事実だし、ここで待っていても仕方がない。コンビ二で買ってくるにしても人前に出ることは避けられないので、私は早々に腹を括っていた。
大丈夫と返すと、少し納得のいかないような顔で渉が引き下がる。仕方ないから、と言葉を重ねると、渋々頷いた渉の手を引いて歩き出した。
「紬、どこか当てあるの?」
「うん。ちょっと行ったところに、あまり知られてないお店があるから、そこに行こうかと思って。渉、好き嫌いなかったよね」
「食べられるだけ上々、でしょう?」


