だから、もどかしくて仕方がない。どれだけ言葉を重ねようと、この議論はあくまで平行線上を辿る。
お互いにそれを分かっているから、私はそれ以上言葉を重ねることを諦めた。このことに関しては、どうしようもないと知っているから。私も彼も、絶対に譲らないボーダーラインがある。
後追い自殺をすることを、彼は良しとしない。私だって、それはしてはいけないことだと思っている。けれど、広義の意味で考えれば消極的な自殺をしたような私を、彼はどうしても、受け入れられないらしい。
好きだから、愛しているからこそ。大切だから、死んで欲しくない、と。────それは、私だって分かるけれど。
やっぱり平行線にしかならない、と思考をシャットアウトする。代わりに瞼を覆っていたタオルを取り払うと、飛び込んできた日差しに目を細めながら空を眺めた。
「……置いて逝って、ごめんね、おしん」
本来は、私も彼も、二人が生きている未来が一番だと知っているのに。
過去は変えられない。どんなに私たちが頑張ったとしても、過ぎてしまったことを変えることは不可能だ。けれどその分、今この時代でこれから先の未来を、そして過去を積み重ねてできた今の関係を、言葉を重ねて行動を重ねて、ゆっくりと変えていくことはできる。
高治様、と呼びかけて、振り向いたその顔にそっと触れた。驚いたように私を眺める彼に、謝らないで、といつかのように言葉を吐く。
彼はいつも、謝る。謝って欲しいわけではないのに、どうしても負い目になってしまっているようで。そう思って欲しくはないのだけれど、彼の中ではどうにも整理がつかないらしくて。
「……貴方を、ひとりにしたくなかった」
だから、彼をひとりにするのは嫌だった。
浮世だろうと常世だろうと関係ない。私に死んで欲しくなかったと言いながら、彼はひとりにしてしまったことを悔いている。一緒にいたいと願うのは彼だって同じで、それを私が、今の私が分からないはずがない。
次の時代で、彼を置いて逝ったのは、紛れもなく私だ。
しかも、より酷い形で。心の準備をする時間なんてないまま。彼の目の前で命を落とした私が彼のトラウマになっているのではないかと、今でも疑っている。
私だって、彼をひとりにするのは嫌だった。高治様とおしんのことがあったから。文のときだってそれは同じこと、けれど何よりも残酷な運命は穏やかな別れを許してはくれず、結局はああいうことになってしまった。
あの後彼がどうなったのか、私は知らない。彼が話さないのだから、私から訊くのはどうにも憚られて、訊こうとしたこともない。彼が言える時に言ってくれると思っているし、言わないのならそれはそれでいいとも思う。それによって彼が傷ついているのなら、話は別だけれど。
「おしんは、優しいね」


