「二人とも辛辣! 失礼!」
自業自得、と呟いた言葉が紬のそれと重なり、顔を見合わせて笑う。もう、と声を上げた芝山さんが俺と紬を見比べると土手を駆け上がって行った。そのままくるっと俺たちを振り返って仁王立ちした芝山さんに、紬がめんどくさそうな表情を向ける。
あれ、そういえば、もしかして。紬って、俺と付き合っていることを芝山さんに伝えてなかったのではなかったか。とするなら、可能性としてこの後考えられる芝山さんの台詞といえば。
「あたし帰るし! 疾風のことは妹尾くんに聞いてね! 彼氏と仲良くね紬また明日!」
「……ま、た、明日?」
「じゃあねばいばい!」
うん、と言葉を反芻している紬を置いて一目散にいなくなる芝山さんに、面倒を押し付けられたことを悟る。一拍置いて理解した紬が天音、と叫んで追いかけようとしたのを捕まえて、そっと首を振った。
諦めた方がいいことは紬も分かっていたらしく、不服そうな顔をしながらも留まる紬と河原に座り込む。ちょっと寒いね、とお互い少しずつ身を寄せ会うと、それで、と紬が話を切り出した。
「どういうこと?」
「えーと、」
どこから話せばいいものか。
「前提として、芝山さんと疾風が従兄弟同士ってのがあるんだけど」
「まずそこなんだよね。全然知らなかった」
「俺も、一昨日疾風から聞くまで知らなかったんだよ。二人、年も同じだし家も近くて仲良いらしいんだ」
「言ってくれたら……嗚呼、ごめん、私のせいだよね」
否定も肯定もできず、紬の言葉にただ苦笑を返す。それを分かって、紬も寂しそうな笑みを向けて来る。そんな顔をして欲しいわけではないのに、今の俺は紬にかける言葉を持ち合わせていない。
冷たい地面に投げ出されていた彼女の手を掴んで、紬より少しだけ大きい手のひらで包み込む。暖めるように、そっと。気付いた紬は寂しそうな顔のまま、包まれる自身の手をじっと見つめていた。
「……それで。月曜日、俺が口滑らせて? かな、疾風に、付き合ってることバレて。それが芝山さんにも伝わってたらしくて、さっき紬が来る前に話しかけられたんだ」
「……天音の相手、お疲れ様」
「疾風だと思えば、なんてことなかったよ」
少し考えた紬が、もう一度お疲れ様、と疲れたような様子で言うのに、思わず吹き出す。自分に置き換えて考えたのだろう、俺も疲れていないとは言っていない。
「紬言ってなかったみたいなのに、バラしてごめん」
「んーん、言うタイミング逃して言ってなかっただけだから、平気。絡まれるのもめんどくさいけど、どうしたって知られたら言われるし、気にしないで」


