あしたのうた



くすくすと笑う芝山さんが、「扱いが雑になってきてない?」と首を傾げた。気のせいだよ、と返しておいて、連絡の来ない自身のスマホを見遣る。会話が途切れると視線のやりどころに困って、どこを見たらいいのかわからなかった。


「妹尾くんて育ちの良さが滲み出てるよね」

「……そうかな?」

「うん。だってほら、人の目見て話すでしょ。自然と身についてるからちゃんと教わったんだろうなーって思うもん」


だとしたらきっと、兄貴のおかげだ。お兄ちゃん子だった俺を突き放すことなく一緒に遊んでくれて色々なことを教えてくれたのは、紛れもなく兄貴だから。


と。


突然立ち上がった芝山さんが、道路に向かって手を振り始めた。何だろう、と思って振り返ると、息を切らした紬の姿。紬、と名前を呼んで彼女に駆け寄り、降りてくる紬に手を貸す。ありがとう、という言葉と感じた体温に、不安だった心が温まるのを感じた。


「ごめん、遅くなって」

「んーん、紬、お疲れ様」

「紬お疲れー! 遅かったね!」

「……なんで天音がいるの?」


芝山さんではなく、俺に向かって問いかけてきた紬に思わず苦笑する。少しの迷いもない判断。なんで妹尾くんに訊くの、と騒ぐ芝山さんを黙殺して、断る理由がなくてと素直に告げた。


「天音がごめんね。うるさかったでしょう?」

「いや、そんなんでもなかったよ」

「ちょっとぉ紬失礼じゃない!? 妹尾くんだってもうちょっとはっきり否定してくれたっていーじゃん!」

「天音うるさい」

「疾風の従兄弟だから、いいかなと思って」


むう、と黙り込んだ芝山さんと、きょとんとした顔で首を傾げた紬。もしかして、と思い当たることが一つ。知らなかった? と問いかけると、紬がこくりと頷いた。


どうやら俺だけではなく、紬も知らなかったらしい。そんな気はしてたけど、と思いつつ芝山さんを見ると、あれえとこちらも首を傾げていた。


「……従兄弟? 疾風って、束野さん、だよね?」

「そうだよ、俺も知ったの一昨日なんだけど」

「うわああたし紬にも言ってなかったのか! めっちゃ言ったと思ってた!」

「初めて聞いたよ今」


ホウレンソウがなってないよね天音って、と呆れた様子の紬に同意の意を示す。芝山さん、というより疾風、というよりもこの従兄弟二人に共通することであるが。


「ということは、二人が会ったらとかそういう以前の話ってことなのね……」

「そうなる、ね。四人で集まりたくはないなあ」

「というか、二人が揃ってるところに一緒になりたくない、が多分正しいよ」