よく、好きよりも愛してるよりももっと上の言葉は、と文芸部で話題に出ることがある。紬に出逢う前まで、そんなの考えもつかなかったし考えようとも思っていなかった。けれど、紬と出逢った今なら自信を持って言える。
好きよりも、愛してるよりも上の言葉は、お互いにとっての『当たり前』。
俺にとっての紬、紬にとっての俺。そして今までの俺にとっての、それぞれの時代での彼女。
好きも愛してるも口にするような風潮ではなかったから言ったことはなかったと思う。その代わり、何度だって言い合った言葉がある。
ずっとずっと、ずっと昔からの、約束。二人一緒にいるのが、俺たち私たち二人にとって、当たり前なのだと。
だから、俺にとっての『好きよりも、愛してるも上の言葉』は『当たり前』なのだ。
「心配してくれてありがとう? でも、それだけは有り得ないから、心配しなくていいよ」
「……ほんっと」
はあああ、と一際大きな溜め息を吐くと、芝山さんはその場にすとんと座り込んだ。どうしたのだろうか、と恐る恐るその様子を伺っていると、疾風が、と呻き声のような言葉が聞こえてくる。
「疾風が、言ってた意味がよく分かる。あたしも感じてはいたけど、ここまでだとは思わなかった」
疾風が言っていた意味。なんのことだろうと考えて、心当たり。多分排他的だということを言いたいのだろう、そう言われても仕方のないようなことを言った自覚は一応持っている。
そんなに、と問いかけると、少々戸惑った後に芝山さんは一つ頷く。分かってるの、と問われてうんと応えると、目線でなんのことかと確認をされて一言排他的、と呟いた。
「……よく分かった、ね」
「疾風に一昨日言われたばかりだし。芝山さん、疾風に似てるから」
「そんなに疾風に似てる? ……じゃなくて」
自覚はしてるんだ、と。落とされた言葉に頷くと、すっと視線を向けられる。
「それでいいと思ってんの?」
「……そもそも、俺も紬もそのつもりはないよ」
「そのつもりはなくても、そう見えるの!」
「それも、まあ、分かってはいる」
「じゃあなんで」
どう答えればいいものか、と言葉を止めた。
二人だけの世界で完結していることは否定しない。だって、彼と彼女だから。他の誰も持っていない『記憶』を、『過去』を共有しているから、どうしたって二人で完結はしてしまう。
だからと言って、他人と関わりたくないわけではないのだけれど。どうにも、この従兄弟二人組は分かってはくれないらしい。分かれと言っても難しいことかもしれないが、そうやって決めつけられると少し悲しいので、やめてほしいなと思うところである。俺からして芝山さんをどう思っているかは置いておくとして、紬にとって芝山さんはちゃんと友達、親友のはずだ。俺にとっての疾風と、同じように。


