窓の外を見ると、ちょうど満開の桜が咲いている。
私の席は窓側の一番後ろ。
それはみんなが羨む場所だけど、一番眠たくなる場所でもある。
時々ふわりと香る春のにおいが、まるで私の眠気を誘っているみたい……。
――……
「心愛ちゃーん」
「……ふぇ~……ん?」
あれ? 今何時……てか私寝てた!?
慌てて飛び起きると、もう三限目が終わっていた。
「あははっ! 心愛ちゃん、ふぇ~ってなに? マジうける!」
うそ、私そんなこと言った?
「て、名前……」
この人と話すときは、やっぱり少し身構えてしまう。
普段は誰かと目を合わすことがない私だから、この人がいつも顔を覗きこんで話しかけてくるのは少し迷惑だ。
「心愛って名前、かわいいよな!
だから、下の名前で呼びたくて。俺のことも、翔流でいいよ」
ていうかこの人、ちょっと馴れ馴れしすぎじゃない?
「たぶんあなたの名前呼ばないと思うから」
私はそうひとつ冷たい言葉を残して、あいつを視界にいれないために窓の外へ顔を向けた。


