いきなり頬をかすめたとがったもの。

一瞬のことでよくわからなかったけど、後から痛みが襲ってきた。


教室の隅には、サッカーボールが転がっている。


やっぱり、外からとんできたのかな……。


―ガラッ

「ごめん!! 大丈夫!?」

突然教室のドアを勢いよく開けて入ってきたのはとんでもない美少年。


「あ……大丈夫です」


私は男子になんか興味ないし、あんまり話したくなかったから少しそっけない返事をしてしまった。


「ちょっと待ってて!」


その人は、私の態度にも顔色ひとつ変えずに教室を出ていった。

それにしてもあの人……どっかで見たことあるような……?


「ごめんね待たせて! ほっぺ見せて?」


またいきなりドアを開けて入ってきた。


今度は、手に絆創膏を持っている。

忙しい人……。







…………え?


まさかこの人って………!


「あ、あのいいです! すいません私帰るので」


引き止める声が聞こえたけど、そんなの気にしてる場合じゃない。

私は机の横にかけてあった鞄をつかみ、走って教室を飛び出した。




静かな廊下に響くのは、私の足音と呼吸の音だけ。


汗のせいで前髪がべとりと額にくっついているけど、私はお構いなしに校門まで走り抜ける。


やっと校門を出て、私は安堵の息をついた。



あの人、見たときから何かおかしいと思ってたんだ。


あんな有名人、この学校で知らない人はいないだろう。


だってあいつは……





学校一の不良なんだから。