紫陽花の涙

あっという間に公園まで来てしまった。

ここの公園は
結構広く造られていて、
あたしが入ってくる入り口から
ブランコまではそこそこ距離がある。


昨日とあんまり変わらない紫陽花を目にしながら
ブランコに向かう。


雨のせいで
少しぬかるんだ地面を見て
サンダルで来てしまった自分を
恨めしく思う。


いつもはスニーカーなのに
今日は少しお洒落をしてきてしまった。


ただの近所の公園なのに。


ブランコが近づいてきて
あたしは落胆した。


彼は居ない。


何を期待していたのか。
どうして化粧をして
お洒落をしてきたのか。
恥ずかしくなった。


昨日初めて見た彼が
今日も居るとは限らないのに。

確信にも似た期待を持っていた。

きっと…
絶対に、居ると。

もしかしたら、
もう会えないかもしれないという気持ちになって
その場に立ち尽くしてしまった。

紫陽花には
まだ雫がついている。

まるで、あたしの代わりに泣いてるみたいで
目が離せなかった。

何も知らない彼に
ここまでの感情を抱いてることに
戸惑いながら
歩き始めた。