紫陽花の涙

どこをどう歩いたのかもわからないくらい
とにかく必死に家に帰った。


湿気が体にまとわりついてくる感覚を
気持ち悪いとも思えないくらいに
あたしはさっきの出来事で
頭がいっぱいだった。

奏さんは、
きっと変に思っただろう。

第一印象とは、
無意識に相手の中に埋め込まれる。

それこそが
相手から見た自分の姿になってしまう。

キャバクラで散々学習したことだ。

だからこそ、
自分を作り頑張って来たのに。

こんな大事な時に限って
こうなってしまう自分が恨めしい。


もう、
彼とはこれ以上の関係になれないんだと、
頭の中で理解して、

あたしはこの日
失恋をした。

淡い色の
まだ花も咲いてない蕾の状態のような
恋心は、
咲くことすら
諦めた。