紫陽花の涙

「じゃあ、
場所変えます?
近くに喫茶店があって、
知り合いなんです。
そこ行きましょ。」


またしても意外な展開に
あたしは頷くことしか出来なかった。


彼の後ろについて、
公園を出る。

背中を見つめながら
心を落ち着かせて
何を話そうか必死に考えていた。


あたしは、
考えないと話ができない。

人の反応が怖くて、
当たり障りない言葉を選んでる。



「あ、そういえば、
珈琲好き?
今から行くところ、
色んな豆を用意してるんだ。
ちなみにオススメはマンデリンなんだけど…
嫌いじゃなかったら飲んでみてよ。」



「ほわっ?!

あっ、好きですっ!!!!」


急にかけられた言葉に
焦って変な言葉を発してしまった。


しかも勢いよく好きです…なんて。


また頬が熱くなる。


彼はまた笑っていた。


「そっか!
ならよかった。」


この会話だけして、

喫茶店にたどり着いてしまった。

木製の重そうな扉を開けて
中に導かれる。


入った瞬間に
珈琲の煎る香りと
微かな煙草の香りが
鼻をくすぐる。


すごく落ち着く香りだった。