キエルビト


「おまっ、なにしっっっ…!!?」
  リンタの顔が一瞬で真っ赤に染まる。その色はヒロにも伝染し、同様に口をパクパクしていた。
 何してるんだ、と言いたいのだろう。
 「え、えーと、その、どうしたの?」
  カルも心なしか頬を赤く染め、目をそむけながら聞いてきた。
  いや、なにも"肩"を見せたいわけじゃないのだ。
 "肩にあるもの"を見せたかっただけだ。
 「これ…」
  私がそれを指さすと、三人の頭から立ち昇っていた湯気がぴたりとやんだ。
 不思議と周りの音もしなくなる。…完全な静寂だ。
  ヒロの陽だまり笑顔はすでに曇っていた。
 「なんなの…それ。」
 「0…1…。嘘だろ、あの時の…?」
 「なんで………いや、まさか、ね。」
  私の左肩。
 そこには"01"と刻まれていた。
 もちろん、なにか一等賞を獲っておめでたいからと彫られたわけじゃない。
  これは実験個体No.。能力者の証とも言える。
 「ねぇ君…これは何…?」
  ヒロの顔が悲痛に歪んでいるのを見て、さすがに怖がられただろうか、と後悔する。
 今まででこの紋章を見た者は、軽蔑するか怖がって逃げるかのどっちかだった。
  正直またか、という気持ちで三人の顔色をうかがった。
 「え。」 
  思わず声が漏れる。
 三人は…怒っている!?
 完全に初めてのケースだった。 
  さらにカルとリンタに対してはなにか思い当たることがあるらしく、嘘…まさか…を連呼している。
 「一体誰がこんなひどいことをしたんだッ…!?」 
  ヒドイ?ダレガ?
 この人たちは何に怒っているの?無関係の人間なのに。同情?偽善?
  それに、これよりもっとひどいことは、いくらでもある。
 これくらいただの飾りにすぎない。
 「…だから私には関わらないほうがいい。」
  これは本心だった。
 能力者に関わるとろくでもないことになることぐらい、いくらなんでも知っているはずだ。
 いや、この人たちは能力者の存在すらも知らされらていない一般人。
  ただの頭のおかしい人、と思われて終わりだろう。
  それに…私としても、関わるのはよくない。
 ここにいると感情が溢れてしまうから。
 せっかくしまったはずなのに。
 深く深く、奥に奥に。