その次は、稲垣さん37歳。

「強盗殺人だったんですか! 怖いですね。子どもたちだけで出かけさせるの、すごい抵抗があります。犯人が見つかるまで外を歩けません。」

「最近の悩みは何ですか?」

これ、警察官が聞くものじゃないよね。

「子どもの学校のお金が払えなくて、借金をしているんです。」

「じゃあ、そのダイヤみたいなネックレスは何ですか?」

「何ですかって……えっ! これは娘が作ったものだから、きっと100円ショップのラインストーンですよ!」

少しあやしい。

「ありがとうございました。」

「はい。」

で、次は陸島さん28歳。

「私は5日前にここへ引っ越してきたばかりで、平井さん……だっけ。その人のことをよく知りません。面識もないです。私は犬アレルギーなので、コーギーを飼ってる平井さんの部屋には入りたくありません。」

「バターは冷蔵庫に入っていますか?」

「私は牛乳のアレルギーもあるので、普段はオリーブオイルで料理をしています。」

「アレルギーの発疹は、今ありますか?」

「無いです。」

アレルギー反応はなかったんだ。
犬とバターには触れていなそう。

「お金には困っていますか?」

「宝くじ、高額当選して新居……今の家を建てて。残り、まだあるから少しずつ使おうと思っています。」

陸島さんは犯人じゃなさそう。

「あとでまた、お話聞いてもいいですか?」

「はい。事件解決には、できるだけ協力してあげたいです。」

「ありがとうございました。」

あと、被害者の夫と一人息子、不倫相手の聞き込みもしないと。 被害者の夫と息子は今、買い物をしている。

帰ってきたので、すぐ聞き込みをした。

「邦孝さんは44歳ですね?」

「あぁ、はい。」

「買ったもの、見せてもらってもいいですか?」

「あんまり見られたくないけど、事件解決のためには。」

「ありがとうございます。」

買い物袋のなかみを調べた。
なかみは野菜や肉、調味料などの食材だけだった。

「今日の晩ごはんは何ですか?」

「ん、えっと。なんだったっけなー? 肉じゃがだっけ。」

あやしい。

「邦孝さんと義人さんの血液型は?」

「私はA型で義人は……なんだっけ。調べたことがないんだ。」

「ちょっと検査するので、明日この地図の場所に来てください。」

「はい。」

「あ。そういえば邦孝さんって、静香さんに不倫相手がいるって知ってましたか?」

「知らなかった。でも少し疑っていました。静香は浮気するような人じゃないから、いないって信じていたんです。」

あやしい。

「俺、知ってます。そして会ったこともあります。」

「義人!」

邦孝さんが急に立ち上がる。

「俺が中学生のころから知ってる。名前は確か矢部尚さん。41歳でしたっけ。」

「義人……お前……知ってたんだ。」

義人さんが中学生のときだと、数年前だ。
それなのに、邦孝さんは気づいていなかった。これは、絶対あやしい。