「わ、私はですね!ただ、静かに毎日を過ごせれば、それだけで幸せなんです!だから、放っておいて下さい!」

…生まれて初めて、こんな大声を出した気がする。

「…面白くないな」
「…」

人の小さな小さな幸せを、面白くないですって?

「…ま、いいか。それが、清水さんの幸せなら」

「分かったんなら、どこかに行って下さい」

そう言って、三枝課長に背を向け再び食べ始めようとすると、今度は唐揚げを一個盗られた。

「ちょっと!」
「うん、美味い。清水さんは料理上手だな」

「お腹空いてるなら、社食でも、外にランチにでも行っちゃってくださいよ」

そう言って溜息をつくと、唐揚げをモグモグ食べながら、三枝課長は言う。


「俺だって、独りになりたい時があるんだよ」



「…え?」


誰からも慕われる三枝課長が?