美味しそうに食べてくれるから、こちらまで嬉しくなる。

「…ごちそうさま」

「…お粗末様でした」

軽くなったお弁当箱を受け取り、ニコッとすると、三枝課長が真っ直ぐに私を見つめる。

ドキドキして、顔がどんどん熱くなる。

「…あのさ」

何かを喋りだした三枝課長の言葉を最後まで聞かないうちに、私はイスから勢いよく立ち上がった。

当然、三枝課長は驚きの眼差しで私を見上げる。

「…す、すみません。仕事があるのを忘れてました。お先に失礼します」

「…あ、ちょっと」

捕まれそうになった手を上手く交わすと、私は屋上を急いで降りた。


…。


誰もいない階段の踊り場で、切れた息を整える。

…危なかった。思わず、三枝課長に好きだと言ってしまいそうになった。

…三枝課長は、上司として、私に優しいだけなのに。

告白なんてしたら、きっと、三枝課長は、私から離れていってしまう。

そんなのは、絶対に嫌。

そう思うと、涙が溢れてきた。

私って、何て惨めなんだろ。情けない…

ごしごしと目を擦ると、私は気を取り直して、オフィスに戻った。