「…ん?」

『三枝課長が好きです!』

そう言えたら、どんなにいいかしれない。

でも、言える筈が無かった。

拒絶されたら?

この関係が壊れたら?

自分の気持ちを言ってしまって、今のこの関係が壊れるのが、なにより怖い。

「…」

私は口を噤んで、何度も首を振る。

すると三枝課長は、困ったような笑みを浮かべた。

「…仕事は?」
「…終わったので…帰ろうとしてたところです」

「…そか、じゃあ、帰ろう…そう言えば、腹減ってない?」

「…ぺこぺこです」
「よし、じゃあ、一緒に飯行こう。家に帰って、独りで飯食うのもやだしさ」

その言葉に、同調するように頷いた。

…一緒にご飯を食べた後、駅に送ってもらう。


「…遅くなったから家まで送るよ」
「エッ⁈そんな!いいです、いいです!最寄り駅から徒歩5分なんで、大丈夫です」


慌ててそう言ったのに、それを無視した三枝課長は、私の手を握ると、改札をくぐり抜けてしまい、あっという間に、電車に乗ってしまった。