「…あんたって、意外としたたかな女だったのね」

「そんな、私はそんなに器用じゃ」

気弱で、何でも後ろ向きで、自分の意見なんて言えない。

「周りの社員だって味方につけて…三枝課長だってあんたに良いように使われてる。三枝課長も、結局はあんたみたいな女が良いのね」

「…三枝課長は。…三枝課長は、私を部下だと思って、上司として助けてくれてるだけで」

「…そうね」
「…ぇ」

「三枝課長は完璧な人だもの。あんたなんて眼中にない」

その言葉が、心にグサリと刺さった。言われなくてもわかってる。

でも、誰かに言われると痛感してしまう。

「三枝課長を、あんたになんて渡さない」

…涙なんて流さない。強くなりたい。弱虫な私から抜け出したい。





「…俺、榎並さんのモノになるつもりなんて、ハナっからないけど?

これ以上、清水さんイジメないでくれる?そんなにイジメたいなら、まずは、俺を倒してからにしてくれる?」


…どこかで聞いたようなそのセリフに、私は声を辿った。