…気を利かせたのか、先にオフィスに向かった三枝課長。

私はその後ろ姿を見ながら、数歩離れてオフィスに向かって歩く。

宣言通り、私を守ってくれた三枝課長に、胸がときめかない筈がない。

…これ以上、三枝課長を好きになるなと、心が言う。

上司と部下。良くて、兄と妹。

きっと、そんな風にしか思っていないんだろうな。

そう思うと、切なくなった。

オフィスに入ると、気を取り直して、仕事に取り掛かる。

いつものように、淡々と仕事をこなしていると、少し離れたところで、何やら揉めている。

…よくよく聞いてみると、大事な案件の仕事を誰がするのかで揉めているようだった。

今まで、そんな輪の中に、入ろうとも思わなかったが、なぜか今回は、自然とその輪の中に入って行った。

「…この案件、私がやってもいいですか?」