私は慌てて自由が利く方の手で鞄を取る。

「…三枝課長、どこに行くんですか?」
「ん?そりゃあ、勿論、頑張るって決めた清水さんにご褒美をあげるために、飯を食べに行くんだよ」

「エッ⁈いや、そんな、大したことじゃないですし」

「まぁまぁいいから、素直に奢られときなさい」

「エッ⁈三枝課長に奢ってもらうなんて、そんな」

慌てふためく私をよそに、三枝課長が突然足を止めた。

「後ろ向きだな」
「…へ?」

「男が奢るって言うんだから、ラッキー位に思ってればいいんだよ、分かった?」

「…ラッキーって…プッ」

クスクスと笑いだした私を見て、三枝課長も笑う。

…2人でご飯を食べてる間も、取り留めのない会話を楽しんだ。


…三枝課長といると、なんだかホッとする。