「春日、入っていいぞ」

ガラガラと音を立てて入ってきたのは、口が開いたまま動かなくなってしまうような美しい青年。

こりゃたまげた。

「俺、春日 悠李っていいます、あ、女っぽい名前ってよく言われんだけど、あんまり気にしないで欲しいかな。よろしくお願いしまーす。」

そう言ってペコッとお辞儀をすると、私の隣に座って、笑顔を向けてくれた。

「今日からヨロシク!、ここは素敵だね、静かだし自然いっぱいだね。」

予想外の言葉に私は唖然していたけれど、とりあえず小さな挨拶をした。

「よろしくね。」

たったそれだけ。

女共を敵にしたら怖いんだもん…。

「じゃあ、今日の一限目は自習だか…ってオイ!お前ら騒ぐなっ!」

先生は、キャーキャー煩い外の女子共に怒鳴り付けた。

しぶしぶ皆帰っていくけど、そんだけ悠李ってかっこいいんだなーって思っちゃった。

まぁ、それは私も思うけど。

でも、キャーキャー人のために騒げるのが凄いと思うんだな、それが…。

「ねぇ!小春ってよく考えたら、春日小春だよね!!」

「よく考えなくても春で挟まれてる春日小春なんですケド。」

「ナイスツッコミ!!」

そう言えば、グッと指を差し出していつものように、コンコンコン、とぶつけて拳を上に掲げた。

すると、後ろから声が聞こえてきた。

「また演劇部が騒いでるぜ、くっだらねぇよな。」

「ちょっと顔が良いからって、なんでも可愛いと思ったら大違いだから。」

…悪口、いつも通りだ。

一つのクラスにでも最高4人の、最小人数部。

何故か、気味悪がられると言うか…。

あんまり嫌われることはしてないはずなんだけど…。

「小春、背ぇ低いくせにまたやんの?似合わねーから、やめろって!」

そんな風に言ってくる、あきらかにチャラそうな女子が私の首を掴んできた。

「…、」

無言で近づいて来たのは、悠李だった。