切なげに、申し訳なさそうに、そして苦しそうに。
鶴さんは答えた。


「ごめんね、小春さん。今、自分がどこにいるのかは分からないんだ。だけどね、あの日僕は、釣りをしに仙台港へ行っていたことだけは間違いないよ」

「仙台港?釣りなんて今までやったことなかったのに、どうして?」

「立ち寄ったカフェで、隣の席のおじさんと仲良くなって。これから釣りに行くから一緒にどうだ?って誘われたの」


話していて、思い出した。
鶴さんはこういう人だったな、と。


誰とでもすぐに打ち解けられて、あっという間に周りに人が集まってきて、笑顔に包まれる。
天性の明るさの持ち主で、人を惹きつける力があるんじゃないかって思う。


例えば道を尋ねられたりすることなんかはしょっちゅうあったし、スーパーやコンビニで店員さんに何気なく話しかけられる確率も非常に高かったし。
居酒屋に出かけると必ずと言っていいほど隣のお客さんから「明るい兄ちゃんだな!」と気に入られて焼き鳥を奢ってもらうことが多かった。


そんなノリで、名前も知らない人と釣りに出かけてしまったのだろう。