「幸菜」

「あ、彰人」

学校の近くの本屋に行ってみると、幸菜は小説を立ち読みしていた。

「どこ行く?」

「楽しいとこ!」

「抽象的すぎるだろ…」

「じゃあ2人とも楽しめるとこ!」

「あー…映画でも観に行くか?」

「うん!私みたいのあるんだ!」

「どうせアクションだろ」

「さすが彰人!分かってるね〜」

お前のことなら大体なんだって分かると言ってやろうと思ったが、やめた。

「行くぞ」

ただそれだけを言って歩き始めた。

その時は気づかなかったが、後になって学校でぼーっとしていたことが嘘のように俺の頭はしっかり起きていた。


「すごかったね!」

「そうだな」

映画を観終わって外に出るともう夕方だった。楽しい時間はすぐに過ぎてしまう。時間をこれほど恨んだことはなかった。

「母さんが、お前家にきていいって」

「ほんとに?やったー!」


騒がしい夏になる予感がした。