「どうしてもね、彰人のことが心残りだったの。どうしてももう一度だけ会いたくて、特別に許可をもらったの。ただし、決まった人…笠原家の人にしか私が見れないという条件付きで」


「泣かないで…私、すごい幸せだったよ。彰人と夏休み過ごせて、いろんなとこ連れて行ってもらえて…ただ、悲しい思いさせちゃうから花火大会でのことだけが失敗かなって思ってるけどね…」

「やめてくれ…そんな冗談」

「冗談じゃない…彰人もおかしいと思ってたでしょ?この異様に冷たい体…」


ふわっと背中に白い翼が生える。


頭の中にあの声が響く。

『時間だ。連れて行く』

はい。分かりました。


「そろそろ行かなきゃ…」

「待ってくれ…行くな…!行かないでくれ…!」

「だめ…行かないといけないの」

「俺も一緒にいきたい…」

「彰人、聞いて?私すごい幸せだったよ」

「聞きたくない…」

「だめ、聞いて。特に彰人と過ごせたこの夏休み、今までで一番幸せだった」

「そんなこと言うな…行かないでくれよ…」

「彰人にはね、これからいろんなことが起こるんだよ…私とはもう会えないけど、彰人にはこれからいろんな幸せが待ってるんだよ」

知らないけど、きっとそうだ。

「お前がいないなんて…」

「私のこと忘れないでね」

「忘れられるわけないだろ…」

「私の分までいっぱい幸せになってね…約束だよ?」


それを言うと、今度こそ体が浮いて、…


私は、逝った。


意識を失った彼の部屋の机の上に、あの思い出のものをおいて。



しおりにしたよつばを。