「ほんとに久しぶりだよね」

「あぁ」

電車に揺られながらの会話はなんだか新鮮だった。

「なんか声低くなった」

「そうか?」

「それに身長だって昔は一緒くらいだったのに今は彰人のが10センチくらい高くなってる」

「そうだな…チビ」

「なに余計なこと言ってんのよ!」

たいして中身のない会話だったが、昔のことを思い起こすには十分な内容だった。

「俺が学校行ってる間どうすんの?」

「適当にぶらついとく」

「終業式だけだから12時半には終わる」

「分かった…終わったあとどっか行かない?」

「そうだな」

「いいの?約束だからね!」

嬉しそうな彼女の顔を眺めていると、やはり変わってないと実感した。確かに綺麗になったが、内面は全く変わっていなかった。それがなんだか嬉しく、いつまでもこのままでいてほしいと思った。

「学校どこ行ってるの?」

「S高校」

「へぇ〜、やっぱ賢いよね」

「そんなことないぞ」

「なに言ってんの、ここらの学区じゃ一番賢いじゃん!」

「まぁな」

「わー、出ました彰人のドヤ顔」

「うるせぇよ、お前は?」

「東京のT高校」

「賢いとこじゃねぇか」

「まぁね!」

「お前のほうがドヤ顔じゃねえか…」

「やっぱり?実は自覚してた」

「してるのかよ」

そうやって喋っている間に降りる駅がきてしまった。高校に入ってまだ数ヶ月だが、今までで一番早かった。


「じゃあ後で」

「待ってるから」

ささやかな約束だったが、その時の幸菜の顔が心に残った。

どこか寂しそうで、切なそうな顔が頭から離れなかった。