気持ちのいい空気、広い空。全てが懐かしく、心地いい。

ここは…私がずっと帰りたかった、彼のいる故郷。

東京に引っ越してから、私はずっとこの故郷が懐かしかった。必ず帰ると決めていた。

それはやはり、彼がいるからというのもある。


あの優しい思い出の彼は今、何をしているのだろうか…



ふと前を見ると、高校生らしき男の人が自転車で私の方に走ってきた。不思議そうにこっちを見ている。


「…彰人」

私はいつの間にか還ってきた原因の、大切な幼なじみの名を呼んでいた。

呼んでから驚く。

背が伸びて、整った顔をしている彼が…あの、『あきと』。

面影はあるけど…素直に、贔屓目抜きにして…かっこいい彼が。


彼は驚いたように目を開き、私の眼の前で自転車を降りて呟いた。

「幸菜…」

懐かしい声。涙がこぼれそうになった。


間違いない。

声は低くなったけど。この呼び方、優しい言い方。

彰人だ。