8月29日、家のインターホンが鳴った。

「笠原助けて!」

「笹野…どうしたんだ?宿題か?」

「さすが分かってる!幼稚園から一緒だった腐れ縁に感謝だわ」

笹野は毎回長期休暇の最後の方に宿題を持ってやってくるのだ。


この頃幸菜は母が用意した来客用寝室に引きこもっていた。どこかに行かないかと誘っても出てこなかった。


「なぁ、幸菜って覚えてるか?」

「小学校入学前に東京に行っちゃった?」

「そう、そいつ」

リビングで宿題を写しているのを眺めながら、やはり笹野は覚えているんだなと思った。

「そういえば幸菜って…」


その続きを聞いて、俺の頭は真っ白になった。