ある夏の思い出〜よつばの約束〜

「何するんですか」

冷たくカバンを投げた、座っているおばさんを見下ろした。

そのおばさんはとても驚いていた。

「何するって…なんのことや分からへん。何もしてへんやんけ」

「佐々木さんどないしたん」

「分からん、このにいちゃんが急に」

カバンを投げたおばさん–––佐々木さんは何のことか分かっていないようで、俺はとてもイラついた。

「なんで人が座っている席にカバンを放り投げたんですか!」

「はぁ?誰もおらんかったやんけ!」

「な…どういう意味だよ!」

「彰人!どうしたの、何騒いでるの?」

俺の隣の席に座っている母が声をかけてきた。父も何事だというようにこっちを見ていた。

「母さん、この人が幸菜が座っている席にカバンを放り投げて…」

「誰もおらんかったやんか!」

「だからなんで…!」

「彰人!やめて!私なら大丈夫だから!」

「でも幸菜ちゃん」

「おじさん、大丈夫だって…彰人、座って?お願い」

「幸菜…」

「彰人。私旅行初日からゴタゴタ起こしたくないの」

ニコッと微笑む幸菜に、俺たちは何も言えなかった。