「あ、あの!」
「…ん?何?」
美波來春が描く手を休めてこっちを向いた。
…風景画?
美波來春の描きかけの絵が目に入った。
見た事のない場所だけど、すごく綺麗な場所の絵。想像で描いたのかな?
「相羽さん?」
「え、あ!ごめん!」
彼の絵に見入っていて、自分から話しかけたくせに美波來春を放置してしまっていた。
「美波來春ってさ…!」
「…何でフルネーム?」
「え、あ…な、何となく?」
私の中では定番になっていた美波來春という呼び方。
それを聞いた美波來春は「何それ」と言って笑った。
そういえば…初めて彼の笑顔を正面から見たかも。
目がくしゃってなって、かっこいいというよりかは可愛いに近かった。
本人に可愛いとか言えないけどね。