真剣にただひたすらにスケッチブックを見つめ、筆を動かす。
美波くんの目線の先に、鮮やかなオレンジが加わっていく。
集中しているその横顔は、とてもかっこよくて、思わず見とれてしまう。
「ん?」
美波くんが私の視線に気づいて手を止め、私の方を向く。
「あ、ううん何でもない。」
私は急いで夕日の外側から黒っぽい紫を重ねる。
夕日の中心に向かってグラデーションにしていく。
けれど、ただのグラデーションじゃなくて、雲の厚みや大きさによって色のつき方が違う。
私たちがあの日見た景色のように、幻想的で、見る人に感動を与えるものにしたい。
その思いで、私はしばらくの間絵に集中していた。

