「うわぁ…」
「さすがに時間無かったから、だいたいの下描きはしてしまったんだけど、どうかな?」
目の前のキャンバスには、私の思い描いていた以上の世界が広がっていた。
ううん、1度は見たことある。
手前には、奥を見つめる女の子の後ろ姿。
女の子の視線の先には、キャンバスいっぱいに広がる夕日。
そして、その手前で悲しそうに、でも笑っている男の子。
あの日見た景色のように、夕日の側には私たちの街並みが描かれていた。
でも、ただの風景画じゃなくて。
夕日の斜め上や男の子の隣などに、まるで鎖のように柵が描かれている。
それが男の子と女の子の距離をはっきりと分けているように見えた。
気のせいかもしれないけれど、女の子はその光景を見て泣いているような気がした。
これは想像画のはずなのに。
何でもない絵のはずなのに。
何でか分からないけれど、胸が締め付けられるように切ない気持ちになった。

