でももう自己紹介終わったんだし、そんなことどうでもいっか。


そう思った時、私の隣に立っていた男の子が1歩前に出た。


その前にチラッと見えた制服についているバッジは、1-2のもの。


何だ、出席番号なんか関係なく私が1番だったんじゃん。


ちょっとムスッとしてると、その人が話し始めた。



「1年2組の美波來春(ミナミコハル)です。來春って女の子っぽい名前だけど、俺は男ですよ(笑)。俺は、絵を描くために産まれてきました。毎日一作品は描いて、自分だけの絵を描けるようにしたいと思います。よろしくお願いします。」



もちろんみんな拍手したけれど、美術室はちょっとざわついた。


だって"絵を描くために生まれてきた"…なんて大袈裟すぎるでしょ。


私がこの人に抱いた第一印象は……絵が大好きらしい変な人。


多分、私以外もそうなんじゃないかな?


美術室はそんな空気に包まれていた。


顔は女の子みたいに可愛いし、名前も名前だし。なのに背は高くて声は低い彼。


その人だけはニコニコと笑っていた。