「入部した日に美波くんが描いてた風景画っぽいもの、今ある?」
美波くんと初めて話したあの日、見とれてしまった美波くんのあの絵。
あの絵を、私も描いてみたい…っ!
「え?あー…いや、今は無いかな。家に置いてあると思う。」
「そっか。私、あの絵を2人でちゃんと描きたい!どこの風景?想像?」
「想像。それでいいの?」
「うん!」
私はそう言ってはにかんで笑う。
「んー…じゃあさ、俺の想像をベースにして、相羽さんのアイデアも加えて実際の景色もモデルにして、描いてみる?」
「…実際の景色?」
「うん。今度の土曜、相羽さん空いてる?」
「あ、うん!空いてる…っ!」
びっくりしすぎて戸惑ってしまった。
美波くんは、私が即答したことにくすっと笑う。
「じゃあ土曜日、学校の正門前に集合。夕方がいいから、4時くらい。その時、モデルにする景色を見に行こう?」
「う、うん!」
土曜日、正門前4時…
私は美波くんと約束したことを頭の中でそっと繰り返す。
これはデートじゃない。部活。
それでも……嬉しいっ。
美波くんは私が了承したことを確認すると、いつもの自分の絵を描き始めた。
そしておそらく、私だけが期待と楽しみを胸に、待ちに待った土曜日を迎えたのでした。