君と描き、君と恋を。




それに気づいた美波くんが「ん?」と首をかしげてきた。


私は今まで考えていたことを美波くんに話す。


すると、美波くんは私のほうを向いてクスッと微笑んだ。



「美術部も大会あんの、忘れないでね」


「……え、そうなの?」


「もちろん。先生がみんなに言ったら大会用の絵を描き始めるくらいかなー」



そうのんきに言った美波くんは、今は猫の絵を描いていた。


水彩絵の具で繊細に描かれたその猫は、今にも動き出しそうなくらい生き生きとしている。


綺麗な茶色い毛とブルーの瞳を持った猫だ。


美波くんは数日前からその猫を描いていて、その猫は描くと決めた日の登校中に会った猫なんだそうだ。


一昨日くらいに、「何日もに分けて描いたら、1日1枚って目標は達成できないんじゃない?」って聞いたら、「家で簡単なの描いてるから。部活ではクオリティ求めたいじゃん」って笑われた。


手を抜くって言葉は美波くんの辞書には無いらしい。


美波くんらしいや。