君と描き、君と恋を。




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ガラガラッ



「こんにちはー…」



最近少し立て付けの悪い戸をなんとか開けて中に入ると、まだ部員は1人しか来ていなかった。


すっかり私たちの特等席となった奥の席に座っているその人は、もちろん美波くん。


私に気づいた美波くんと軽く挨拶を交わし、隣に座る。



私が絵を描く準備を始めていると、吹奏楽部の演奏が聞こえてきた。


それと共に聞こえるのは、応援部の大きな声と野球部のカーンと響き渡るバットの音。


ここのところずっと聞こえているそれらは、高校野球の大会が近いことを物語っていた。


大会は7月後半あたりにあるってクラスで聞いたような気がするから、残り1ヵ月ってところか。


野球部員のみんなもピリピリしてきて、周りも応援モードに入っていく。


そういえば、悠貴が「夏は野球ばっか注目されんだよなー。サッカーも大会あんのによ」とぼやいていた気がする。


そんな悠貴もいざ応援となったら誰よりも大声を出すんだろうな、と思うと少し笑ってしまった。