ウサギの王子に見初められ。



一日開けて大みそか。会う時間を決めてなかったから連絡したけど返って来ない。

昨日は家で自作アプリのバージョンアップをするって言ってたから、寝るのが遅かったのかも。

『たまには好きなように書きたいんだよね』と言ってたけど、やっと休める日までプログラミングをしたい気持ちが私にはわからない。根っから好きなんだよね。

お昼近くにスマホを見てもまだ返事がない。どうしたのかな、と電話したらやっと出てくれた。

『もしもし。真奈ちゃん?』

「まだ寝てたの? ごめんね」

『んー、朝までかかっちゃって。なんじ?』

「まだ寝たかったらいいよ?」

『じゃあうち来てて? 真奈ちゃんの鍵あるよね。もうちょっとだけ寝るから起こして』

言ったと思ったら切れた。寝ぼけてるのかな。えーと、来ててって言ってたよね。買い物しながら行こうかな。

持ち歩いてるけど最近使ったことのない合鍵を一応チェックした。いつの間にか、私のものになったらしい。




玄関から出ると、雲のない青い空。

植木真奈、今夜のことはちょっと緊張しますが、がんばります。大丈夫、三上くんだから。それに、私だから?

一駅の距離を、散歩がてら元気に歩き出す。

来年も、仕事も恋も引き続き、失敗しつつも頑張れますように。



「キスしてくれたら起きる」と言う甘えた王子様が、ウサギの皮を脱いで予想外に昼間から甘く囁いてくるのが今年の締めくくりになると気づくのは、まだあと少し後の話。




THE END