あれが目の前に来た。

あーぁ。ここで死んじゃうんだ。翔に思い伝えられなかった。

ごめんね。みんな、ごめんね。


「……きなー!」

「ゆきなーーーーー!」


どこからか声がする。私を呼ぶ声。

でもきっと遅い。

だって、もう目の前にあれがいる。

斧を振り上げ今にも私を殺そうとしてる。


「うわぁあああああああ」


(ドンッ)


「あ、あきら!?」


亮があれに突進した。


「誰が見捨てるかよ。死ぬ気で動かせ!」

「亮…。」

「行くぞ。走れ!!!」


あれはまだ転がっている。

あ、れ…?

着ぐるみ? うさぎの着ぐるみ?


「亮さっき私を呼んだ?」

「いや、呼んでない。」

だって、俺はお前を置いて逃げ出そうとした。
最低だ。

「そっか…」


あの声は誰の声だったのかな?

私の気のせいなのかな?